——旗揚げ準備公演から数えて、丸7年たちました。ここで、現在の「虚構の劇団」についていろいろお聞きします。
鴻上「はい。どうして旗揚げしようと思ったかとか、基本的な考え方は、この下にあるやりとりで答えてます。旗揚げ準備公演の前に答えたものです。詳しく知りたい方は、そちらもご覧ください」
——では、現在の「虚構の劇団」はどんなシステムですか?
鴻上「基本的な考え方は、ずっと変わっていません。劇団は試行錯誤し、失敗しながらも成長していける場所だという考え方です。具体的には、入団費や維持費は、いっさいかかりません。『虚構の劇団』を運営するサードステージという会社がすべて、責任を持っています。公演は、この7年間、平均して年2回やってきました。全部で、13 回公演しました。新作が6 本、再演が 5 本、鴻上以外が演出する番外公演が2本です。」
——劇団員は、現在、何名ですか?
鴻上「劇団員は、現在、7名です。平均年齢は、28歳になります。最年長は33歳、最年少は20歳です。新人は、オーディションで受かると、1年間、研修生として公演に参加します。その後、正式な劇団員になるかどうかが決まります」
——いきなり公演に出演できるのですか?
鴻上「はい。なにせ、劇団員が現在7名しかいませんから、ほとんどの場合、公演に参加します。公演に参加することが、1年後に、正式な劇団員になれるかどうかの最終試験なのです。それと、「一人芝居」を自分で創って、上演することが求められます。その結果で、1年後に決まります。1年後にしているのは、実際に一緒にやらないと分からないからです。オーディションの短い時間の間にすべてを決めるのは、不可能だと思っています。また、演技経験がまったくない人は、この1年間の成長で判断するのです」
——養成所みたいなものはないんですか?
鴻上「毎年、数人の合格者なので、養成所という形はとりません。公演に参加することが養成であり、研修です。その中で、必要なことをちゃんと伝えます」
——どうして、そんなに劇団員が少ないんですか?
鴻上「これはもう、鴻上本人の希望としか言いようがありません。鴻上が1981年から2012年まで作・演出をしていた劇団『第三舞台』の時も、俳優は最大10人でした。責任持って関係を創れて、演出ができる人数はそれぐらだと思っているのです。人数が多くなると、集団としてきしみや軋轢が出てくると思っています」
——劇団というのは、縛られるんじゃないでしょうか?
鴻上「いろんな劇団、いろんな事務所があると思います。『虚構の劇団』は、基本的に年二回の公演に参加すれば、あとは自由です。実際に劇団員達は、自分たちでユニットを結成したり、客演したり、映像の仕事をしたりしています。年二回の公演は、稽古が約5週間、公演が東京、大阪合わせると3週間ほどです。稽古は、週6日、13時から21時までです。
ただし、とてもおいしい仕事が、劇団の公演とぶつかった時には、僕と制作と俳優で相談します。劇団の目的は、「集団のまとまりを強める」ことではなく、「俳優として成長し、売れる」ことです。ですから、「この仕事は、劇団の公演を一回休んでもやる意味がある」と判断すれば、公演に参加しないという選択肢も当然、あります。」
——劇団は、「俳優として成長し、売れる」ことが目的なんですか?
鴻上「もちろん、その劇団でしかできない表現、その俳優達でしか現せられない瞬間・舞台を創り上げたいと思っています。そのためには時間と膨大なネエルギーが必要です。本公演を休んで、他の公演に出ることが、そのことに近づくことなら、さらに素敵だと思います」
——でも、劇団て、下っぱは、演出家や上の役者の使い走りになるんじゃないですか?
鴻上「だからあ、平均年齢28歳の俳優が7人しかいない集団ですよ。劇団員は、新人だろうが先輩だろうが、「ライバルであり同志」の関係になれたら素敵だと僕は思っています。下っぱでパシリにするような関係性は、僕が絶対に拒否します。だから人数が少なくしている、とも言えます」
——『虚構の劇団』の目標を教えて下さい。
鴻上「もちろん、プロの劇団になることです。つまりは、食える俳優、食えるスタッフになることです。現在、お金はいっさいかかりません。チケットノルマもありませんが、逆にいえば、ギャラはありません。観客を5千人、1万人と増やしていくことがプロになる道なのです。または、演技力を向上させて、客演や映像の仕事を着実にものにすれば、食えることができます。そのためには、『虚構の劇団』の公演が話題になること、舞台や映像(テレビ・映画)関係者が『虚構の劇団』の公演にたくさん来てくれて、『虚構の劇団』の俳優を発見し、認識してもらうことです」
——俳優のマネジメントもしていますか?
鴻上「はい。『虚構の劇団』を運営しているサードステージが、俳優のマネジメント部門を持っています。他の舞台の出演やテレビ、映画への仕事を斡旋しています。所属料やレッスン料・プロフィール写真代などはいりません。『虚構の劇団』に所属した場合、希望すればサードステージのマネジメントを受けることができます」
——スタッフ希望者の話もして下さい。
鴻上「はい。『虚構の劇団』は、演出部という名前のスタッフ部門があります。平均年齢がこちらも28歳です。どういう人がいるかは、「演出部」のページで見て下さい。鴻上は、1981年から2012年まで『第三舞台』という劇団の作・演出をしていたと書きましたが、その時の演出助手や演出部から、演出家の板垣恭一、脚本家の戸田山雅司、同じく脚本家の中谷まゆみ、美術家の小松信雄などが現在、活動を続けています。それ以外にも、演出部として多くのスタッフが活動を続けています。『虚構の劇団』の演出部も、同じように多くのプロを生み出せれば素敵だと思っています」
——なにか、特別なレッスンがあるんでしょうか?
鴻上「いえ。なにか特別な講習があるわけではありません。『虚構の劇団』の公演に参加し、現場を経験していくことで、プロになるためのスキルを磨いていくのです。それは『第三舞台』の時と同じです。現在、『虚構の劇団』の演出部では、プロの舞台監督、プロの演出助手が生まれました。さらに多くの演出家、作家、美術家、舞台監督などが生まれることを希望しています」
——作家志望のための文芸部というものはないのでしょうか?
鴻上「すべてまとめて、「演出部」と呼んでいます。『虚構の劇団』では、役者達がよく「自主公演」をやります。その時にやる台本を常に求めています。そこで、台本を書き、俳優に演じてもらうことが、一番いい練習だと思っています。もちろん、台本に対して、鴻上は求められればアドバイスします」
——どういう人を「演出部」は求めていますか?
鴻上「これはもう、将来、プロになりたいと思っている人です。そのために、まずは現場で汗を流すことが平気な人。これは、作家も演出家も美術家も舞台監督も衣裳も、すべてのスタッフ志望者共通のことです」
——最後に言いたいことはありますか?
鴻上「なにか質問があったら、いつでもサードステージの事務所に聞いて下さい。これが、質問用のメールアドレスです。☆印をアットマーク(@)に変えて下さい。
kyokou☆thirdstage.com
それでは、オーディションでお会いしましょう」
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で、「虚構の劇団」って何なのよ?
という疑問に、主宰・鴻上尚史がお答えします。
――どうして、劇団を旗揚げするのですか?