そんなわけで、また『虚構の劇団』の公演の時期がやってきました。今回は、『虚構の劇団』としては、新しい展開です。
まず、今までで、一番、再演の声が高かった、『虚構の劇団』の代表作を上演することにしました。初演は、紀伊国屋ホールだったので、比較的公演期間が短かったのです。
この作品は、現代人の第二のアイデンティティー、「ネットでの自分」についての物語です。現代人で、「エゴ・サーチ」をしない人はいないでしょう。誰もが、ネットで自分自身を確認するのです。それは、リアルの世界で自分を確立することに対抗する、ネットでの自分の確認、ネットでの自分の立ち位置、つまり、第二のアイデンティティーを探す、「もう一人の自分探し」と呼んでもいいと思います。
もし、そこに、具体的に自分の知らないもう一人の自分がいたら。
それが、物語の始まりです。
そして、それは、南の島の記憶と結びつきます。僕が訪ねた、沖縄の遥かな離島は、いじめをうけた小学生、中学生が、都会から生き延びるために緊急避難してきていました。彼ら彼女らは、その島にきて「子どもらしくなった」と語ったのです。
物語はネットと、そして、そこから一番遠く見える、沖縄の妖精、キジムナーをめぐる話です。
この正反対の二つがどう結びつくか、ぜひ、劇場でお確かめ下さい。
そして、初演をごらんになった方にも、今回は『虚構の劇団』としての新しい展開が待っています。なんと、外部から三人の期待の若手俳優に客演をお願いしました。
牧田哲也さんは、D-Boysを代表する俳優です。伊阪達也さんは、新進気鋭の若手俳優、八木菜々花さんは、モデルであり近年注目の女優です。
この素敵な三人を迎えて、『虚構の劇団』の劇団員達は、いっそう、再演に燃えています。
ぜひ、劇場にお越しください。そして、物語の行方と俳優の成長を確認して下さい。
お待ちしてます。
鴻上尚史