ども、鴻上です。毎日、ガシガシと『ピルグリム2019』の稽古を続けております。
いろんなインタビューで「どうして、『ピルグリム』なんですか?」と聞かれます。はい、答えます。
ひとつは、虚構の劇団で第三舞台の作品『天使は瞳を閉じて』を再演して、ありがたいことに好評をいただいていることです。
で、「他の『第三舞台』の作品も『虚構の劇団』で見れないのですか?」と聞かれることが増えました。
なので、「おお、ありがたい。んでは、やりますか」となりました。
もうひとつの理由は、今回、客演してもらえる秋元龍太朗さんと伊藤今人さんにぴったりの役が『ピルグリム』にあることです。
それは何かは、劇場に来ていただいてのお楽しみです(あ、もう、インタビューで答えたりもしてます)
そして、三つ目の理由は、作品に関することです。
『ピルグリム』は、なんと、今から30年前に書いた作品です。
その時は、「伝言ダイアル」というNTTの作ったシステムが、NTTの予想を超えて利用され、
「目に見えないネットワーク」がたくさん出現しました。
人々は、そこで、誰にも言えない悩みを語りました。
僕にはそれが、その当時、希望に感じました。
そして、2003年、新国立劇場のシリーズとして、『ピルグリム』は再演しました。
この時は、「分散型コンピューティング」というものを取り上げました。
各人の個人のパソコンをつないで、巨大なネットワークを成立させ、
例えば、宇宙からやってくる電波の中に知的生命体の証拠となるような規則性のあるものを見つけるプロジェクトとか、
スーパーコンピューターのような働きを目指したのです。
僕は、この時も「目に見えないネットーワク」に希望に感じました。
そして、今、「目に見えないネットーワク」は、スマホという形で実現しました。それは希望になっているのでしょうか?
僕達は、電車に乗っていても、定食屋さんで飯を食っていても、スマホを操作すれば人を追い詰めることができます。
場合によっては、死にいたしめることだってできます。非日常が、なんともカジュアルに日常の中に定着しました。
そして、「目に見えないネットワーク」は希望から、重荷や苦痛になりました。
そんな時代だからこそ、『ピルグリム』を再演したいと思ったのです。
もうひとつ。新国立劇場での再演は、僕自身の力不足によって、僕自身、納得できないものでした。
俳優さん達は、素敵な演技で一生懸命やってくれました。問題は、僕自身の読み間違い、未熟さでした。
なので、再演のリベンジの意味もあるのです。
写真は、『梅棒』『ゲキバカ』という怒濤のスケジュールをこなして、いよいよ本格的に稽古参加になった今人さん。
今人さんから「まだ若手なんで、『今人』の呼び捨てでお願いします」と言われて、戸惑っております。
手作り弁当。なんと、レタスと豚肉の冷しゃぶ。うまそう。
その横で、バッグの中にお母さん手作りの弁当を隠して食っていた溝畑。
「なんだ、その食い方は!?」と突っ込みました。「ああ、お母さんに怒られる」と言っておりました。
そんなわけで、稽古は続きます。
鴻上尚史