「エゴ・サーチ」32

第9回公演/エゴ・サーチ 虚構の稽古場Blog 2013年10月5日

「小学校と中学校が同じ建物のなかにあるんです。グラウンドも共有で。」

初演の時、何度も口にしていた台詞。
風景のイメージはできても、そこでの生活のイメージをすることが難しかった。
なにか、まだ足りないというか、いくらイメージをしても、それ以上はなかなか広がっていかない感覚があったんです。

その島で暮らす人たち、学校に通う子供たち、どんな遊びをして、どんな言葉を交わし、どんな空気を吸って、どんな生活をしているんだろう。

ただただ興味をもったのでした。

その緑いっぱいの芝生が広がるグラウンドの向こう側には一面の空と海がある。
実際にその風景を見た時に、ハッとしました。
小さい頃から知っているような、産まれた場所のような、そんな懐かしい感覚。
来たこともないはずなのに、その空を、その海を、その光景を見た時に、もしかしたらこれは、誰もが感じる共通の感情じゃないだろうか。と。

たまたま、夏休み中の2人の島の子供が学校に遊びに来ていて、学校を案内してくれると言ってくれました。

学校の裏には「生きる力」と書かれた石碑が立っていて、
この間紹介したヤギ家の皆さんもこの場所へ遊びにやってくる。

茄子やトマト、子供たちが育てている野菜の畑には、網が張ってある。
これはヤギ対策なんだって。
どんなに網を張っても、ヤギに食べられ、何度も何度も挑んでは食べられの繰り返しなのだという。

さらに子供たちは、「秘密基地に案内してあげる」と誘ってくれた。

学校の裏にもガジュマルの木が立っていて、
その力強く地面に伸びた枝と枝の間を、やっとの思いでくぐり抜ける。

あっちがキッチン、ここがトイレ、玄関はそこ、ここはボクの部屋、と紹介をしてくれるのだけど、僕がキッチンに行くには玄関よりも狭い枝と枝の間を抜けなければいけない。
そういえば、僕も小さい頃、トトロの木に似た大きな木を秘密基地にしていた気がする。
なにもない場所に、理想を思い浮かべては隣にいる友達と共有をする姿は、夢がいっぱいだった。
体が大きくなってしまった僕は、結局、あっち側には行けなかった。

まさに自然に囲まれた学校は、生きる力がそこら中に溢れていて、いつかこの島で暮らしたいなと、僕もまた、大きく深呼吸をして、この島を離れたのでした。

そして、都会・池袋。

ついにこの日がやってきました。
『エゴ・サーチ』、幕が開きます。
新キャストで贈る2013年版をぜひ観にきてください。
どんな物語になるのか、楽しみです!

小沢道成


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